拍手とともに幕がおりる。
しばしの間休憩に入った。
今日は久しぶりに二人でお芝居を見に来た。
「久しぶりにここに来たがなかなか良いものであるな。」
「・・・。」
「やはり劇はいい、そうは思わんかね?」
「・・・。」
ふむ、さっきから返事が無い、心なしかとってもソワソワしている。いったいどうしたというのだろうか。トイレなら今のうちに行って来ればよいのに。
「トイレなら今のうちに行くんだぞ、この後休憩ないからな。」
「いえ、そういうわけでは・・・。」
ではどうしたのだろうか。
せっかく来たのだから楽しんでもらいたいのだがなぁ。少し理由を聞いてみようか。
「さっきから様子が変であるが、気分でも悪いのかね?」
「いいえ」
「では、どうかしたのかね?」
「あの、なにかお忘れになってはおりませんか?」
なんのことだ?俺は何を忘れているのか?
よくわからないので聞いてみることにした。
「なにが?」
「あの、今日収録の日です、ボンバー先生」
「・・・。あああああああああああああああああああ!」
開演のブザーが鳴り響く。
ゆっくりと幕があがり、次の芝居が始まろうとしている。
期待に浮き足立った会場がざわめきに包まれる中、私は頭を抱え、ただ固まるしかなかった。
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