睡眠薬で見る白昼夢
窓の外では黒猫が踊ってる
飼い主の少女は
虚ろな目でそれを見てる
行き先の分からない列車
蛇行する意識
吐き散らした紫煙は
真っ白な鴉になって飛んで行った
空けたボトルに入っていたものは
もう思い出せそうにない
桜の木の下に埋まるあの子の名前は
もう思い出せそうにない
波打ち寄せる浜辺
少女は黒猫と踊ってる
焼きたてのパンを咥えて
流れるように踊ってる
化学物質で飛ばした意識は
帰り道を忘れてる
GPSなんて当てにならない世界
袋小路を彷徨ってる
ベジタリアンが真昼間に飲む酒
つまみはもちろん野菜さ
グレイビーソースをたっぷりかけた
真っ赤に燃えるトマトサラダさ
踊り疲れた少女は
猫を膝に眠りこけてる
夕陽とともに傾く頭
夢の中で見る夢を聞かせてよ
右から四番目のレンガを叩けば
冴え渡る神経細胞
ちゃちな倫理や正義は
丸めてあいつに投げてやるのさ
何かを変える時なんだ
何かが始まる時なんだ
全部忘れちまったんだ
変えたい何かも欲しい何かも
薄暗い部屋の中
少女は口笛を吹いている
世界の終わりを告げるフレーズ
黒猫は何処かへ消えてった
飛ばした意識の着地点は
俺じゃなくたっていいはずさ
浴びるように飲む酒は
舵を切るのを許さねぇのさ
明滅する視界の中で
こけた拍子に世界が反対に見えてくる
反対から見るだけで輝く世界なら
それほど下らねえもんはねぇだろう
少女が笑顔で囁いた
貴方が目で見ているものも
貴方が感じているものも
全ては脳内という檻の中
虚ろな目で見つめておくれ
流れるように踊っておくれ
夢の中で見た夢を聞かせておくれ
黒猫は何処かへ消えちまった
夢も現実も所詮は脳内現象さ
その差もいつか忘れちまうさ
檻の中を歩き疲れたその時は
一緒に檻を壊してくれよ
トップに戻る