“理想のヒロイン”という題を出された時、正直困惑した。理想のヒロインというものを想定したことなど無かったからだ。脳内にイメージが無いのに書くというのは不可能だ。というわけで、とりあえず理想のヒロイン、というテーマについて脳内整理もかねて書いていく。
まず、ヒロインという語の定義について。辞書的な定義ではヒロインは
①女性主人公。また、男性主人公の恋人を指す場合もある。 ②英雄的な女性。女傑。
という意味の語である。だが、少なくとも昨今、ヒロインの語を女主人公や女英雄を指して使うことはまずない。主に①の後半の意味で使われている。とはいえ、最終的に主人公と恋仲になる“メインヒロイン”以外にも、“サブヒロイン”が存在している作品も多い。また、単に作品内で活躍している女性キャラクターに対して、ヒロインの呼称を用いる場合もある。人外や、男の娘など、辞書の定義から完全に外れているキャラもヒロインとして扱われることもある。このように、ヒロインの語を明確に定義することは難しい。
ここで留意してほしいのは、そもそも、ヒロインは多くの場合に架空の存在(キャラクター)を指すということだ。現実の女性をさして使われる場合はあまり多くない(“悲劇のヒロイン”などと比喩として使われることはある)。ヒロインを作り出すには自分のイメージが大事なわけだ。これはヒロインに限ったことではないが、キャラクターを練りこんでおかなければ満足に会話させることすら難しい。だからこそ、誰にとっての理想なのかの想定と、その想定からくるキャラクターの練りこみが必須となる。
一般の理想を想定するのはあまり難しくない。例えばツンデレなどと表現されるようなステレオタイプのヒロインはいたるところに存在するからだ。ヒロインというものは、多くの場合、カテゴライズされてしまっていると考えていい。外見、性格、後は主人公との関係などの組み合わせで生み出された、典型的なヒロインのというものが多いのである。しかし、これだけ多くの“ヒロイン”の典型が存在するのにさらに典型が生まれ続けているのは、世間的にこのステレオタイプのヒロインというのはまだ認められているということである。幼馴染はともかくとしても、肉親とか男の娘などの現実ではタブーとなっているものをヒロインとするのは一部の男性の理想(というよりは欲望)の具現化として受け入れられているのかもしれない。一般向けにヒロインを作り出すことは、とりあえず男性受けすることを前提に練り上げられているのであり、男性の理想(あるいは欲望、妄想)に媚びるヒロインの創造が目的なのである。
むしろ難しいのは自分の理想の想定だ。よほど好きなキャラがいない限り、一番好きなヒロイン、などは思いつかない。かといって、自分で作り上げるのはなおさら無理だ。どうやっても既存のキャラの二番煎じになる。既存のヒロインのバリエーションというのは、その上、自分の理想のヒロインの追求は、先に述べたとおり、自分の理想や欲望や妄想を直視することにつながる。ある種の自己満足として作品を作る。理想のヒロインをかく、というのは自分の性癖をさらけ出すのと同義となる可能性がある。あくまでも自分の理想を追求した場合だけであるが。こうなってくると自分の理想のヒロインを書くには、キャラの練りこみ以外にも、相当の自信か、もしくは人の目を気にしない強さが必要だ、ということになると考えてしまうのは、自意識過剰だろうか。
理想のヒロインについてグダグダかいてきたが、別にこれはヒロインに限った話でもなく、ヒーローでもそうだし、もっと言えば娯楽作品の創作には大概当てはまる。
自意識の高い人はあまり作品とか書かないほうがいい、という話にもなるのだろうか。
太宰や芥川など(や、ほかにも大勢の自殺するような芸術家)を考えると創作自体に自尊心や自意識との葛藤がある気もする。
・・・こんな仲間内の創作でなに恥ずかしがってんだといわれればそれまでだが。
余談
カテゴライズできないようなヒロインを考えていて真っ先に出てきたのは 謎の彼女X の 卜部美琴 だったがどうだろう。ほかに「こいつは分類できないだろう」というヒロインはいるだろうか。あまり思いつかないが。
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