昔ある男とこんな話をした。


なぁ、豆腐の角に頭をぶつけて死ぬとはどのような状況だろうか?

なぁーに簡単だガチガチに凍らせた高野豆腐に頭をうちつければ死ぬだろう。


成る程やはりお前は賢いなぁ。


あれから30年私は今年で45歳。

結婚をして幸せに暮らしていた。
あの日までは。



あの日は確か、そう夫が設立した会社の10周年記念パーティーを会社内でやっていた。
皆楽しそうに談笑していた。




人件費削減のため料理は我々だけで行った。


パーティーが佳境に入ってきたころに隣の部屋から女性社員の強烈な悲鳴が聞こえてきた。

中を覗くとそこには社長であり私の夫である男性が死んでいたのである。

すぐに警察がきた色々取り調べを受けた。
しかしどこにも凶器が見つからずなかなか解放してくれなかった。


そこに探偵だと名乗る中年男性と多分その娘であろう高校生くらいの女性とよくわからない眼鏡の少年が来た。

どうやらこの中年男性はここの現場を指揮する警部と知り合いのようだ。

事情を聞き出したのだろうか、あたりを探り始めた。
特に少年が中年男性と打ち合わせをしたそぶりも見せずに
家のの探偵さんがね云々と話を持ちかけなにやら色々物色しだした。



30分後、中年男性が良くわからない声をあげてねてしまった。

全く何をしているのだろうかとあきれていたが、警部は期待の目で中年男性を見ている。


彼が言うに犯人はこの中にいるらしかった。







-成る程解りました。では説明いたしましょう。まず被害者は頭を角でぶつけた跡があります。しかし凶器は見つからない。
おかしいですよね?
普通撲殺するときは固くて重たいものを使いますが、この傷あとはツルハシのようなものを使わない限りつかない形です。
ところが被害者の頭には面白いものがまだあったのです。
傷口を頂点として皮膚が放射状に傷んでいるのです。
そして頭の下には少々の水溜まりがありました。
ここで私はある仮説を立てました。

犯人は床に氷か何かをおき、被害者を誘いだし、強烈な足払いをし被害者を氷か何かに音速で叩き落とした。
その後使ったものは鍋にでも放り投げればいいでしょう。
そういえば奥さん今日のメニューに高野豆腐がありましたよね。-
-何が言いたいのよ?-
-ズバリ、犯人は貴女です。-
-…、ハァー。そうさそこの探偵の言う通り私が殺ったさ。-
-まさか本当にこのトリックで殺したのか?-
-ああ、そのまさかだ。-
-しかしなんでまた殺そうとしたのだ?あんなに仲良かっただろ?-
-ああ確かに、会社が成功するまではな。
奴は昔は高野豆腐が大好物だった。
会社が成功した後もいつも通り晩御飯に高野豆腐を出した。
するとあの人は何と言ったと思う?
'こんなケチ臭い貧乏人が食うようなのを出すなよ'
て、言ったのよ。
私は真に驚くべき事だと思ったよ。
学生の頃は高野豆腐にかける思いを小一時間語るくらい熱い男だった。
私はその熱さに惚れ結婚をしたがあの人の中ではもうその熱も冷めたのだろう。
半ば諦めたがチャンスが来た。
人件費削減というケチ臭い貧乏人のするような理由で私を料理担当にした。
そこで当初はメニュー全て高野豆腐で埋め尽くす勢いで町中回って高野豆腐を買い漁ったよ。
そして今日料理中にガチガチに凍った高野豆腐を見て思い出したの。
あの人が昔豆腐の角でぶつけて死ぬということに関する会話をね。

それからすぐにあの人を呼び予めおいてあった高野豆腐に頭から叩き落とした。
あの時大好物だった高野豆腐で死んでもらったのです。あの時の情熱を思い出させるために。-

私は最強のトリックだと思ったのだが。

こうして私は署につれていかれた。


そしてブタ箱からこの話をしている。


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