真っ赤なお鼻のトナカイさんは、いつも皆の笑いもの。
「どうして僕の鼻は赤いんだろう」トナカイさんはひとりさみしく呟きます。
「おまえの鼻は役に立つのさ」おやおや、サンタさんに盗み聞きされていたようです。
「サンタさん……でも、何の役に立つの?」
「ハナニー」
「……えっ?」トナカイさん、どうやらよく聴こえなかったみたいですね。目をぱちくりさせています。
「子供たちに夢を与えるサンタさんの乗り物ともあろうきみがハナニーを知らないのかい? 鼻オナニーのことに決まっているじゃないか」サンタさんは不機嫌になってしまいました。髪が金髪になって逆立ち、周囲からはオーラが噴き出ています。戦闘力たったの5、ゴミですね。
「サンタさん……僕、サンタさんの言っていることが分からないよ……」トナカイさんはいつまでたってもカマトトぶっています。こういう女子アナ、虫唾が走ります。
「トナカイさん、どうやって赤ちゃんができるかは知っているよね?」と金髪サンタさん。顔はサタンさんです。
「えと、こ、コウノトリさんが……」
「黙れいっ!」
「ひいっ!?」
「子供たちに夢を振りまいている間におまえも見ただろう! 悦楽の波に溺れる淫靡な男女たちを! 性なるまぐわいによって人間は生まれるのだ!」もうすぐ定年のサンタさんが、性行為について熱く語る姿、夢見る子供たちには見せられません。
「え、でもサンタさん、前『あれはゴルフというスポーツだ』って言ってたじゃないですか」
「ひとつの穴を複数の棒で順番に狙うのだから間違ってはおるまい」サンタさんはNTRフェチでした。
「わけがわからないよ」トナカイさんは契約を迫ってきそうなつぶらな瞳であきれています。
「ならば実演するしかあるまい」
「サンタさん、なんで近づいてくるの、夜まではまだ時間があるよねえ乗るのはまだ早いよサンタさんねえ! ねえ!」
「うるせえクリスマスもクリ○○スも変わらねえよ!」サンタさん、素が出てますよ。
「サンタさん、僕オスだよぉ…」
「トナカイはな、オスでもメスでも角が生えてんだ、変わらねえよ」
「や、やめてようサンタさん……」トナカイさんは涙目で懇願しますが、サンタさんもサンタである前に一人の男。欲望は抑えられません。
「鼻だけじゃなくて顔全体が真っ赤だなあトナカイさんよ」
「サンタさん、僕恥ずかしいよぉ……」身をよじらせるトナカイさん。体重は数百キロあります。
「知ってるか? お前の鼻はな、暗い夜道でぴかぴか光ってるのさ。あれじゃあ襲ってくれって言ってるようなもんだ。おかげで俺のハナニーも捗ってるぜ」
「サンタさんが! サンタさんがケモノになっちゃった!」男は皆オオカミなのですよトナカイさん。
「ねえ、トナカイさん」サンタさんの顔が急に穏やかになりました。動物への慈愛にあふれる子の顔は完全にムツゴロウさんのそれです。
「思えば、わたしはクリスマスイブにトナカイさんを乗りまわしてばかりで、何もお礼をしていなかったね」
「サンタさん……いいんです、僕はトナカイですから、サンタさんに乗られるのがお仕事ですから」
「トナカイさん……そう言ってくれるのかい……」サンタさんの目から大粒の涙がこぼれました。涙は空中で散らばって雪となり、街にゆっくりと落ちていきます。
「今夜はホワイトクリスマスのようだね」サンタさんが頬笑みます。さっきのは何かの間違いだったんだねサンタさん、とトナカイさんも一安心です。
「でも、やっぱり申し訳ないから君にはプレゼントをあげるよ。このホワイトクリスマスにぴったりの」
「白濁液をね」
「……サンタ、さん?」
「おまけで子供もつけちゃうよトナカイさん! どんな子供が出来るだろうね、ミノタウロスかな?」
「サンタさん子供を食べるミノタウロスなんて僕産めないよ! だいいち僕はオスだって「ちょっと静かにしなよトナカイさん」サンタさんのそり返った煙突がトナカイさんの口をふさぎました。サンタさんって煙突に入る人じゃないの? って言う疑問はいい子なら気にしちゃ駄目ですよ。
「全裸でクリスマスの夜を飛び回っているのに楽しそうな君のことだから、こういうのは好きだと思ったんだ」とサンタさん。トナカイさんは知恵の実を食べていないだけかもしれませんよサンタさん。
「サンタさんこんなとこ見られたら仕事無くなっちゃいますよ! 最近は規制厳しいんですからね!」トナカイさんそういうメタ発言はいけませんよ。
「うるさいっ! 私はプレゼントを贈りたい、ただそれだけなんだっ!」
「うっ」流石はサンタさん、一晩で世界中の家を回りきるだけあって早いです。トナカイさんにプレゼントが贈呈されます。


「サンタさん、何故急にあんなことを……?」
「きみへの気持ちは元々あったんだけどね、ホラ、こんなお願いがあったのさ」サンタさんがトナカイさんに見せたのは一枚の紙。
『さんたさんへ。しろひげ×ちょっぱーぼんがほしいです ふじょこ』
「サンタさん、つまりさっきのが……?」
「言っただろう? 私は『プレゼントを贈りたい、ただそれだけ』だったんだ」サンタさんの髭と煙突が自慢げにぴんと起ちました。
「でも、しろひげってたぶん違う意味ですよ……」ちなみにトナカイさんはヒルルクが好きです。
「いいんだよ、プレゼントというのは気持ちなんだ。心をこめれば、少しぐらい違ったって喜んでくれるものなのさ」サンタさんが目を細めて言いました。
「これが、私の考える最強のプレゼント、だったのさ」


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