眼鏡越しに見た道に割り込む人。
 人。
 人。
 ゴミだなんてとんでもない。
 アリだなんてどうかしてる。
 私は鳥になんて生まれなくてよかった。
 蛾になんて羽化しなくてよかった。
 毎日空を飛ぶたびに、
 
 この景色。
 
 足元はるか下。
 ここが地上なら畜生道に当たる場所。
 東京タワーの真下には
 
 人間が生きていた。

 震える指先に
 窓が白く曇って
 濡れる。
 空にかかる私の呼吸。
 映る顔は私で
「うちがみえるね、〇〇ちゃん」
 私の隣に映るアレのように。

 はしゃぐ
 人。

 コイツらが感じるのは
 タワーから見下ろす優越感?
 全能感?
 自嘲?
 ?

 すごくどうでもいいよね。

 もうだめ。無理無理無理。

 私はアレに
「早く帰ろう、お母さん」 
 しっぽを振る。

 どうしたの怖くなったのうるさいな早く死ね
 笑いながらいらだちを隠す。
 私はなんて可愛いんだろう。

 私が東京タワーなるそれに与えられたのは、



 俯瞰する「あんた」だった。
 
 

 私の上には
 いつも
 
 あんたがいる。
 
 あれ以来ずっと。 
 
 あんたはいつも私を見ている。
 
 
 人であることを楽しむ私を
 見るあんたはゆるく笑う。
 たかが??
 どうせ**
 
 うるさいなうるさいなうるさいなうるさいな氏ね。
 wwじゃないよ氏ね。
 ぜったいに殺すから、
 口を引き裂くから、
 目をえぐるから、
 ほらこんなふうに、
 ガタガタ奥歯鳴らせよ、
 私に怯えろよ、
 私を笑うなよ、


 私はアレの奥歯をペンチで潰す。

 母親はガタガタもせず
 ピクリともせず
 あんたの元へもう向かったのかな。
 
 まだ足りない?
 ねぇ、まだ足りない?
 いいよ、次は誰がいい?
 後悔するまでだかんね。
 あんたが私を作ったことに後悔してさ、
 私を笑わないでさ、
 私と同じ目線でさ、
 見守らずにね、
 見下さずにね、
 
 「愛してる」って言ってくれるまでだかんね。
 
 それまでじっくり私を見てなよ神様。
 そのすまし顔の微笑でさ。 
 
 


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