近年の分子生物学の発展は凄まじく、信じられないほど精密な細胞の機構が明らかにされてきていますが、それらの機構はすべて進化によって形成されたもので、非常に効率的に働きます。
 遺伝子の本体はDNAというのは有名な話ですが、そのDNAがコードしているのがタンパク質のアミノ酸配列で、生物の働きの中心を担っています。当然、その管理は細胞にとって非常に重要です。さて、そのタンパク質管理の一環で、不要なタンパク質や異常なタンパク質を分解する必要が出てきます。そこで登場するのがユビキチン・プロテアソーム系です。これはプロテアソームという巨大なタンパク質分解酵素がユビキチンの付加されたタンパク質を認識して分解する機構です。細胞は分解したいタンパク質にユビキチンを付加することで標識し、プロテアソームという分解の専門タンパク質にまとめて分解させることで効率的なタンパク質の分解を行っているのです。
 さて、筆者はこのユビキチン・プロテアソーム系という考え方を実生活に応用すると非常に効果的であることを発見しましたので、以下で紹介します。
 我々学生は日頃の授業で大量のプリントを配布され、その整理に難儀します。これらのプリントの中には不要になるものも多く、それらを保持することは必要プリント類の管理にも混乱を引き起こすため、プリント整理を阻害してしまう結果となるので、不必要プリント類の除去が必要とされます。
 大量のプリント整理においては不必要プリント類も大量に存在するため、1枚の不必要プリントを認識するごとに一回ごみ箱に向かっていると非常な労力を必要とし非効率的な機構であることこの上ありません。
 そこでユビキチン・プロテアソーム系という考え方の導入が必要となるのです(Fig. A)。そう、不必要プリント類の認識・除去を同時にするのではなく、標識と除去を分けて行うことによりプリント整理の効率を大幅に上げることができるのです。

 ただ、ユビキチンの付加に相当する行為としてふせん・クリップなど標識物質をプリントに付加することはプリント整理に掛かるコスト(金銭的にも体力的にも)を不必要に上げてしまいます。そこで筆者はコストをかけずに不必要プリント類を標識する方法として、プリントを握りつぶす手法を開発しました。プリントの握りつぶしはプリントの立体構造の変化(立体化)を引き起こしますが、これら立体的に変性したプリント類は散らかった部屋にそのまま投げ捨てても目立つため、不必要プリント類の標識に非常に有効となります。 不必要プリント類を認識すると、その場でそのプリントを握りつぶし投げ捨てる。こうすることにより不必要プリント類の標識さえすれば、後は簡単です。時々思いたった時にごみ箱をプロテアソームに変身させ、部屋に散乱している標識された不必要プリント類をまとめて除去すなわちごみ箱にいれればよいのです(Fig. B)。
 以上のような不必要プリント類の管理を実行することにより効率の良い不必要プリント類の除去を行うことが可能となり、プリント整理全体の効率の上昇・さらには成績上昇を伴う勉強効率の上昇までが見込めます。みなさんも、分子生物学の知識を応用した効率的なプリント整理を実行してみてはいかがでしょうか。

 画像出典:細胞の分子生物学(Newton Press),一部改変


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