・・・俺はこの国が嫌いだよ。
ああ、聞いてくれる人がいるのか。
なら、そのままで頼む。
最初は、どうして嫌いなのかわかってなかったんだ。
思うようにならないことに、子供みたいに癇癪を起こしてるだけじゃないかと思っていたし。
もちろん、今のこれが子供の癇癪じゃないという保証はないがね。
そうそう、ヒトゴミも嫌いだよ。数が集まるといつも気に食わないことが起きる。
でも何より、嫌なのは。
嫌だったのは、自信満々な連中だった。
なんていうのかね、一歩間違えば平気でいじめを始めそうなやつ。
自分を省みずに、人の陰口を平気で言えるやつ。
・・・うまく言えないな。
これで察しがついたとも思えないが、話を進めよう。
実際、ここからの話に俺の好き嫌いはあまり関係ないからな。
腐ったみかんの法則、というのがあるよな。腐った人間は排除すべし。
この国の多くの人が内心では共感しているんじゃなかろうか。
さも無きゃこんな言説がいまだに残ってるわけ無いんだ。
この国の腐れ方は、この法則に全部現れてる。
クサッタニンゲンハハイジョスベシ
腐ったみかんの法則と似てるとされる割れ窓理論と対比してみようか。
『割れた窓をほっとくな、真似して割るやつが出てくるから。すぐにきれいにする様にしてりゃ真性のいかれ野郎しか割らないさ。』ってやつが割れ窓理論だ。
分かるか?判れよ?理解るよな?
この国は問題の原因を人に求め、海の向こうの自由の国では環境に見出すんだ。
クサッタニンゲンハハイジョスベシ
まともな人ならクサッタニンゲンってなんだろうな、って疑問に思うはずだ。
身近にいる嫌いな奴を思い浮かべる人もいるかも知れない。
いじめのリーダーになってる陰険な奴とか。
積極的に陰口を叩く陰湿な奴とか。
自分の事かとおびえだす人は・・・居ないか。
だが、この言説が言うクサッタニンゲンってのはそれじゃない。
考えてみれば分かるだろう。そいつらが排除されている所を見た事なんて今までに一度だって無い筈だ。
じゃあ誰なのか。
俺にはわからないね。分かりたくもないが。
ただ、いつもある言葉が胸にこみ上げてくるんだ
手前ら皆腐ってるくせに、何自分は真人間ですって顔してやがる。虫唾が走る。虫酸が走る。
ムシズガハシル。畜生気持ち悪い。これだからヒトゴミは嫌いなんだ。
この国はゴミ箱だよ。でっかい人間のゴミ箱さ。
本当はみんな排除されるべきなのに、何を思ったか少数のニンゲンだけ切り離して、これでこの箱はもう腐らないって信じてる哀れなゴミどもさ。滑稽ともいえるのかも知れないがね。
その中に居るゴミのひとつとしては笑えない事態だ。いつから腐ってたのかは知らないが、俺が生まれたときにはすでに腐ってたんだ。今じゃそこら中汚臭が立ち込めてる気すらして来る。
ああ本当に、自殺したいくらいだ。どこか遠くの国で。海の向こうで。遠い海ならその上で死ぬのも良いかもしれない。
自分が腐ってるのは自覚してるんだ。ただ、無根拠に自分は腐ってないと信じてる連中の周りで死にたくないんだよ。
死ぬときくらい、きれいな空気の中で死にたいじゃないか。
ここじゃ駄目なんだ、この国じゃあ、俺は死ねないよ。死にたくない。
ああ、酔っちまったみたいだ。酔った末の戯言ってことにしといてくれ。出来れば、忘れてくれると、・・・
急性アルコール中毒で一人の男性が死亡したニュースが流れたのは、その翌朝の事であった。
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