僕は、樋口さんが好きだ。
樋口さんは、僕が八年前に初めて出会った時から、ずっと気になっている存在だ。
凛とした、しかし素朴な顔立ち。
趣味は和歌を詠むこと。これは彼女に出会ったころに僕が彼女から聞いたことだ。
本を読むのも好きみたいで、将来は小説家になりたいらしい。
彼女はちょっと気まぐれだから、時折僕のもとから離れてどこかへ出かけていってしまう。
そんなときは寂しくて、時には泣いちゃうこともあるけれど、
そのときはたいてい近所に住んでる野口くんがうちに遊びに来て、僕と世間話をして慰めようとしてくれる。
野口くんは金遣いが荒いのが玉にキズだけれど、とてもいい子だ。
彼女は気まぐれだから、またふとした時に僕のもとに戻ってきて、やさしく僕の頭を撫でて、「好きだよ」って僕の耳元で囁いてくれる。
そんな彼女が、この上なく好きなんだ。
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