ここはいつもの平安時代。みんなが楽しく歌を詠んでいるみたいだよ!!
あれれぇ〜その仲でも一際目立つ彼。そう、歌詠みとしての技量は知らないものは無く、
容姿、管弦、感性も格段に優れている歌の貴公子。今回はそんな彼のお話お話。(パチパチパチ




 業平は悩んでいた。皆さんは富も名声も地位も得た彼に何の悩みがあるのだろうとお思いだろう。
しかし、何のことは無い。いったい自分に出来ないことは何か、ということを悩んでいたのだ。
白川上皇よろしく天下三不如意なるものを決めてみたくなったのだ。
つまりは戯れなのである。

すると昼の御座から侍従の諾子の声がした。
丁度いい・・・
というのも諾子ははっきりとした物言いをする侍従で私に臆することなく自分の意見を言ってくれるため、
良い相談相手であったからだ。


諾子を召して業平は言う。「なぁ、麻呂の意の如くならないことって何じゃ?」
「そのナルシな性格の改善じゃないかしら。そして麻呂って気持ち悪いからやめて。」

相変わらず当意即妙なつっこみだ。
が、負けず嫌いの業平は再び問う。すると返って来た答えは意外なものであった。


「愛・・・じゃないかしら。それも…純愛。」
しばしの沈黙の後、業平は諾子の瞳を覗き込んで言う。
「奇を衒ったもの勝ちとは言うが、お主、戯れに言うたわけではなかろう。詳しいことを話してみるが良い。」

一瞬迷うそぶりを見せた諾子。しかし、意を決したのか唇を少し強く締め、業平に視線を合わせ凛々しい声で提言する。

「立場を弁えてない事は理解してる。でも、聞いてほしい話があるの。私いつも思っていたけれど、あなたは『愛』を知らない。
恋愛ってものはそもそも一人の人を好きになって、なんとか苦労してその人を振り向かせる過程の事を言うの。
でもあなたの場合外見と歌ですぐに自分のものになる。それで、勿論思い入れなんて無いから飽きたらヤリ捨て。
それって果たして愛なのかしら?純愛どころか愛ですらないと私は思うの。あなたって可哀想・・・。」


業平は何も言うことが出来ない。というのも諾子の言うとおりだからである。
今まで恋はしたことがあってもそこに愛があったと言える自信は・・・無い。
恋は下心、愛は真心とは良く言ったものである。

「つまり、一人の人を真剣に愛することから始めよ、とな。」
「そういうことね、一夫多妻制は当然かもしれないけど、やっぱり私たちも自分以外の女性に愛情を注がれてるなんていい気持ちじゃないし。
それに、『純愛』ってものはね自分はどうであろうと好きになった人に幸せでいてほしい。っていう感情なのよ。」

考えを改めた業平はそれはもう努力しました。好きになった人以外の女性を弄ばず、傷つけず、そして一人の女性に全ての愛を捧ぐ。

その結果、業平は山奥に隠棲しているお姫様にその一途な性格を買われて幸せな結婚生活を送ったそうですよ。(チャンチャン



・・・ある少女は後にこう語っている。「・・・これで、良かったのよね・・・。」 Fin


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