午後ゆっくりとノートを開く。
英和辞書とにらめっこしていると、使い古された机と紙の匂いがなんとなく体をくすぐってきた。
窓からは暖かい日が差し、表面の乾いた机ごと自分を容赦なく照らす。じりじりと、汗の出ない頭、時間、部屋の空気が熱くなった。その匂いすら感じる。日で透けた辞書の紙のページはかすかに黄色を帯びている。
もぞもぞとした感覚が芽生えてくると、もう指先は辞書のページの端をつかみ、ぐりぐりと力を入れて変形させ始めていた。熱さ、倦怠感を圧搾機で潰し取るような心地で、手汗にまみれてぐずぐずになる小さな紙の塊を一度一度、親指と人差し指でひねって無理矢理形を変えてゆく。
汚らしい塊が出来た頃にそれを口に近付け、前歯と舌できつく噛んでみた。黄色い紙の汁が出てくるような感覚がしたときには、もう塊は奥歯で潰していた。にやにや笑いながら、ちりちりと前歯で噛んだ後に搾られた紙の塊は、
女の陰部から出てくる汁の味がした。
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