俺は魔法雲子
三度目なのでもうみんな飽き飽きしてるだろう
これから始まるのは、あの感動の再会からしばらく経ったとある日曜日のお話
柑菜は俺を毎日食べ続けていた
俺が人間と喋れることにも気付き、脱糞後しばし歓談し、そして柑菜は俺を食べるという満ち足りた日々だった
その日曜日、柑菜は俺を排泄し、皿に載せた後いきなりこう切り出した
「そーだ!うんちっち!言ってなかったけど、今日はお客さん来るんだょ☆」
「え、客?じゃあ早く俺を食べないと変態扱いされるんじゃ…」
「ぶっぶー!逆だよ♪うんちっちのことをその娘に紹介するんだよ!」
「…え?ちょっと待って。自分で言うのもなんだけど俺って大分変な存在だよ?」
「大丈夫!!その娘にうんちっちのこと話したら『私も見たい』って言ってたから!」
……柑菜なら言いかねないかもしれない
\ピンポーン/
「あっ!来た!ちょっとそのままで待っててね☆」
待っててと言われても動けないが…
部屋の外からはハイテンションな柑菜ともう一人女の子の声が聴こえる
そして2人分の足音が近づいてくる
普通に引かれるのではないだろうか?そんな不安が高まっていた
ガチャと部屋のドアが開き、柑菜に続いて一人の少女が入ってきた
おそらく柑菜と同じJKだろう。人間の中ではそこそこ可愛い方ではないのだろうか
まぁ柑奈には劣るが
一瞬目があったがその少女は睨んでいた様な気がする。やっぱりうんこなんてそんな扱いが当然だろう
「じゃあ紹介するね!これが私のうんちっちだょ♪」
「は、初めまして…うんこです」
「で、こっちが私の親友の胡桃!」
「…初めまして胡桃です」
「…」
「…」
「じゃあ、3人で遊ぼっか!」
「3人っていうか俺人間じゃないし…」
「ちょっと待って」
胡桃はいきなり立ち上がり、皿の上にいる俺を素手で掴んだ
「え!?」
俺が驚いているうちにも胡桃は俺を口まで運んでいこうとした
しかし、慌てて柑菜がそれを引き留め、俺は一命を取り留めた
「ちょっと!何してるの胡桃!?このうんちっちは私が食べるんだょ?」
「やめて!離してよ!私はこいつを食べてそれから死ぬの!」
柑菜は暴れる胡桃を抑え、俺は胡桃の手元からねちょりと落ちた
柑菜はそれを急いで拾い上げて皿の上に戻し、胡桃にとられない様に背後に隠した
「どうしたの胡桃?ワケを話してよ!」
「・・・・・・」
「…私は胡桃とずっと友達で居たいよ…だから、話して?」
「私は…友達じゃ…イヤ」
「え?私のこと嫌いってこと?ゴメン…」
「ううん!それは違う!むしろ大好きなの!」
「「!!?」」
「柑菜鈍感だからどうせ気付いてないと思ってたけどやっぱり…。
初めて柑菜と同じクラスになった時から私ずっと好きだった
仲良くしていく内にドンドン好きになって…女の子同士なのに変だよね
半年前、柑菜がうんこ食べるのが好きだって聞いた時は本当にびっくりした
でも、そんなことを明るく言える柑菜が本当に好きだった
だから私は柑菜ともっとお話をするためにうんこを好きになろうって思った
最初うんこ食べた時は抵抗あったけど、ちょっとずつ慣れてった
そのことを柑菜に話すととっても嬉しそうで、私も取っても嬉しかった
柑菜はうんこのことばっかり話してた
『私のうんちっちは喋るんだょ☆』って言われた時は本当にビックリした
でもそんな嘘つくわけないし、本当なんだろうなーって思ってた
うんこの話するときの柑菜はとっても嬉しそうだった
だけど、同時に私は嫉妬してた
柑菜は私のことを見てくれない。うんこのことばっかり考えてる
ある日私は決めた。うんこになろう。うんこになれば柑菜も私のこともっと見てくれるから
その日から私はうんこしか食べなくなった
でも、うんこにはなれなかった
ちょっとうんこ臭くなったけど、やっぱり私は人間だった
もう柑菜は私のこと見てくれない
柑菜の心を独り占めにするうんこが憎かった
だから柑菜からうんこを奪うしかない。そう思った
でも、それって好きな子を傷つけるんだよね…ゴメン、柑菜グスッ」
「胡桃…ゴメン。私、全然知らなかった」
そう言いながら柑菜は胡桃を抱きしめた
胡桃は鼻を鳴らしながら泣き始めた
俺には人間の感情のことがよく分からない
でも、この子が本当に柑菜のことを好きだってことは分かった
「あの、胡桃さん…」
「グスッ…何?」
「俺のこと食べてもいいですよ」
「え…?」
胡桃は驚いた眼で俺を見ていた
「別に胡桃さんに食べられても俺は死んだりしないだろうし、たまに柑菜に会わせてくれるなら…」
「うんちっち……胡桃、私もそれでいいょ」
「柑菜……ううん。やっぱりいいよ。そんなことしても柑菜を悲しませるだけだし、そしたら私柑菜のこと好きになる資格なんてない。結局私はうんこになりきれなかったけど、うんこを嫌うこともできない」
「胡桃…」
「でも、私のこともうちょっと見てほしいな。うんこの次にでいいから…」
「胡桃…違うよ…。私、胡桃のこともうんちっちのことも同じくらい大好きだよ!女の子同士だと恥ずかしいけど…」
「柑菜…」
「胡桃…」
その後、2人は今まで以上に仲良くなりしばしばうんこを食べさせるようになった
柑菜以外に食べられるのは初めてだが中々悪くない
そして、俺は胡桃に鼓舞されて柑菜に告白した
柑菜はめちゃくちゃ驚いてたけど嬉しいって言ってくれた
この恋が実ることは無いだろう。
だけど俺はこれからもずっと柑菜と一緒にいられる
柑菜が死ぬ時は俺も柑菜の体内で死ぬんだ
そんな幸せを噛みしめながら今日も俺は柑菜、たまに胡桃に食べられる
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