12月頃ともなると人々は忙しさの中にありながらも浮き足立つ
クリスマスというイベントを目の前にして
俺もその例に漏れない1人の大学生だ
初めて出来た彼女、美咲と過ごす初めてのクリスマス
同い年とはいえ男として自分がリードしたいが、どこで、何をして過ごせばいいか分からなかった
毎年違う彼女とクリスマスを過ごしている友人に聞いても
「え?クリスマスなんて夜の街でちょっと遊んでプレゼント渡してホテル行くだけだろ」
と言われるのがオチで、自分が納得いく答えは得られない
俺はそういうことをしたいのではない、いやしたくないと言えばウソになるが
そういうことは既にしてるし、別にクリスマスにかこつけてすることでもない
ただ、美咲と楽しく過ごしたい、美咲を喜ばせたい
それだけだった

「なぁ美咲、クリスマスイヴ何がしたい?」
クリスマスの1週間前、俺は美咲をデートに誘って帰り際に尋ねた
不器用な自分があれこれサプライズを用意するよりは聞いた方が良いと思った
「うーん…外は混んでるからイヤだし…じゃあ、翔君の家にお邪魔していい?私は実家だし」
「え?それでいいの?」
「うん。下手に出かけるよりはそっちの方が落ち着くし。お邪魔していいかな?」
「も、もちろん」
意外な答えだった
クリスマスと言えば外でご飯食べたり遊んだりするもんだと思いこんでた
「分かった。じゃあ、楽しみにしてるね」
「あ、あと今何か欲しいものある?」
今まで美咲に自分が選んであげたもので本当に喜んでもらえたことがないから、これも聞いてみようと思った
つくづく情けないのは自覚してるが
覚悟はしていたが、美咲は呆れ顔になって
「フフッ…翔君って本当不器用だよね。普通プレゼントって聞かないでしょ?」
「いや、でも美咲に喜んでもらえた方が嬉しいから…」
そう言うと美咲は微笑みながら
「ありがと。じゃあ1つお願いしていいかな?」
「お、おう!なんでも言ってよ!」
「じゃあ……イヴの1日だけ翔君の『こども』になりたいな」


イヴの朝9時頃、朝食や部屋の片づけを済ませたところで玄関のチャイムが鳴った
「はーい」
玄関を開けると案の定美咲がいた
「おう、みさk」
「ただいま!パパ!」
「パ……は?」
「もうっ、パパ、娘のこと忘れたの?」
…こどもになりたいって、本当にそういう設定なのか
ちょっと恥ずかしいけど、美咲が本当にしたい事なら付き合おうじゃないか
「ごめんごめん、美咲ちゃん。おかえり」
「うん!ただいま、パパ!」
美咲はそう言いながら部屋に入ってきた
普段は束ねていない長い黒髪をポニーテールに束ねてちょっとでも幼さを出そうとしているのが可愛い
大学生にしては少し幼い顔立ちの美咲が余計幼く見える
胸は元々子供みたいだね、と言うのはやめておこう

俺は、普段以上に身体を寄せて座ってくる美咲に尋ねた
「で、何する?」
「うーん…じゃあ前やったゲームの続きしたい!」
「そんなんでいいの?」
「うん…ダメ?」
「いや、俺は全然構わないけど…」
構わないけど…こんないつも通りの過ごし方で美咲は満足するのか?
だが、自分から何をしたいか尋ねた以上こうするしかないが…
もやもやしながらPS3をセットし、美咲専用のピンクのコントローラーを手渡した
美咲はそれを受け取ると立ち上がり
「んしょっと…」
あぐらをかいて座っている俺の脚の上に座ってきた
「え!?ちょっ…」
「子供の時、よくこうやってパパの膝の上に座ってテレビ見たりしてたんだ」
「へ、へぇ~。そ、そうなんだ」
結局、俺は美咲の頭の上から画面を見て、美咲の体の前でコントローラーを操作することになった
ゲームをしながら美咲の体は揺れ、そのたびに俺と美咲の身体は擦れ合った
(だ、ダメだ…娘の体に欲情しちゃ…)
そう心の中で言い聞かせながらしたバトルゲームは美咲の連勝で終わった
美咲が前にいて、視界が悪かったから、だと思う

「そろそろ12時か…昼飯は買ってあるけど…」
「えー、パパの手作りがいい」
わがままなこどもだなぁと思いつつも
「……分かった。簡単なものでいい?」
「うん!パパの手作りなら何でも!」
美咲は心の底から嬉しそうに笑っていて、その姿は本当にちょっと大きな娘のようだった
俺は思わず美咲の頭を撫で
「じゃあちょっと待っててな」
と父親ぶった態度をとってしまった
俺もいつのまにか少しずつパパ役が板についてきたのかもしれない

昼食は本当に簡単で、クリスマスらしさはゼロだった
それでも美咲は「わぁーおいしそう!」なんて言ってくれて健気なものだ
「「いただきます」」
2人同時に言ったが、美咲は食べ始めずにこっちをずっと見ている
「どうしたの?美咲」
「パパ、あーんして?」
薄々そんな気はしていたが、やはり恥ずかしい
「……はい、美咲ちゃん。あーん」
「あーん。はむっ……やっぱり美味しい!」
「そっか。パパは嬉しいよ」
2,3度同じやり取りをして満足したのか、飽きたのか美咲は自分で食べ始めた
沈黙が続いて少しさびしかったので
「美咲、パパにもあーんして?」
美咲はちょっと驚いたような顔を浮かべながらも
「はい、パパ、あーん」
と言いご飯を俺の口の中へ運んでくれた
案外、親子ごっこも楽しい

洗い物を済ませ部屋に戻り、TVを見ていた美咲に声をかけた
「じゃあ、次は何したい?」
「ちょっと散歩に行きたいかなー」
「分かった、じゃ仕度しよっか」
「うん!」

外は思ったよりも寒かった
美咲がいつものように手を繋ごうと手を伸ばしたので手を握ったが、いつもの指を絡めるカップル繋ぎではなく握手するような繋ぎ方だった
細かいところまでしっかりしてるなぁと改めて思った
散歩してる間も美咲は無邪気な子供みたいに俺に喋りかけてきた
俺もできるだけパパを演じててみたが、喋りっぱなしだと少し疲れるのでこんな提案をした
「ねぇ、まだ昼で人もそんなにいないだろうからちょっと買い物に行かない?」
「え?うーん…パパが買いたいものあるならいいよー」
「よし、じゃあ行こうか」
俺がこの提案をしたのにはちゃんとした目的があった
美咲が「こどもになりたい」ってお願いしてきて、何が欲しいかを聞き出せず、結局クリスマスプレゼントを用意してなかった
買うならもう今しかなかった

家から一番近い大型のデパートに入り、とりあえず2人で普通に買い物を済ませた
店内はまさにクリスマスムードで、ツリーが至るところに置かれ、店員はみなサンタの格好をしていた
その似合わないサンタ姿の店員を見て俺は思いついた
「なぁ美咲、今年サンタさんに何が欲しいってお願いした?」
「……」
美咲は考え込んでしまったが、欲しいものを聞き出すにはこれしかないと思った
しばらく考え込んで美咲はやっと答えた
「うーん…えーっと…マフラー、かな。今使ってるのもう長いし」
「そっか。美咲はいい子にしてたから絶対サンタがくれるだろうね」
「うん!あ、ちょっとトイレ行ってくるね」
「分かった。じゃあ上の階の休憩室で待ってる」
「はーい」
よし、今のうちに急いで買ってさっき買った物の袋の中に入れておけば…
俺は急いで上の階で美咲に似合いそうなマフラーを買い、休憩室へ向かった
なんとか美咲より早く着いたようだ
数分後に美咲が来た。おそらく大きい方だったんだろう。勿論聞かないが
「ゴメン、パパ遅くなっちゃった。トイレがちょっと混んでて」
「やっぱり人が多いところでもパパって言うんだな…っていうか昼間は人が多くなさそうって言ったのに意外と多くてゴメンな。人ごみ嫌いだからって俺の家に来たのに」
「いいよ、それくらい。パパと手つなげたし」
「そ、そっか」
「じゃ、暗くならないうちに帰ろ?」
「うん」
俺達はまた手を繋いで俺の家に帰った

「「ただいまー」」
「「おかえりー」」
「「…ンフフ」」
笑い声まで被ってしまったが、美咲は嬉しそうだ
「夕飯は買ったものばっかりになっちゃうけどいい?クリスマス仕様ってことで」
「うーん…またあーんしてくれるなら」
「はいはい」
美咲の恥ずかしい提案を受け流しながら、前もって買っておいたチキンやらを冷蔵庫から取り出そうとして冷蔵庫を開けると、見知らぬ箱が入っていた
見るからにホールケーキが入っいるであろう箱だった
「ねー、これ美咲が持ってきたの?」
「え?うん。パパに食べてほしくて私が作ったの!」
「え、手作り!?それは嬉しいなぁ〜」
「えへへ、残さず食べてね」
「もちろん!」
朝、家に入ってきた時に冷蔵庫に入れたのだろうが、いつもと雰囲気が違う美咲に見とれて全く気が付かなかった
こんだけケーキがあるなら夕飯はちょっと減らそうかな

「はい、出来たよー」
「あれ?結構少ないね」
「美咲のケーキを残してまで店屋物を食べる必要はないからね」
「ありがと、パパ」
美咲はにっこり笑いながらそう言った。かわいい。
「いやいや。じゃあまずケーキ以外から食べようか」
「うん。いただきまーす」
「いただきます」
・・・・・・・・・・・
「「ごちそうさまでした」」
「じゃあケーキ食べようか」
「うん!」
テーブルの上の皿をどかして冷蔵庫からケーキを取りだし、準備よく美咲が持ってきていたローソクを立てた
「じゃあ美咲が消して。子供だからね」
「うん!」
美咲は本当に童心に帰ってるかのようにうれしそうだ
ふぅーっと思いっきり吹いて火は一発ですべて消えた
「じゃあパパはメリークリスマスの歌うたって」
「え、恥ずかしいよ…」
「いいからいいから」
「えー……分かったよ」
俺は下手な発音でWe wish you a merry Christmasを歌った
美咲は体でリズムを取りながらそれを黙って聞いていてくれた
「じゃあ食べよっか。私、切るね!」
「お、おう」
美咲は丁寧にケーキを8つに切り分けて小皿に取ってくれた
「じゃあ、パパあーんして」
「あーん…もぐもぐもぐ……ん、これめっちゃ美味しいじゃん!店で買うのより美味しいんじゃない?」
「えーパパ、娘にお世辞なんか使っちゃダメだよ?」
「いやいや、本当に。美咲、お菓子作り上手だもんね」
「えへへ、ありがと」
本当にお世辞ではなく美味しかった
可愛い彼女に手作りケーキ、本当に過去最高のクリスマスだ

ちょっと多かったが、美味しかったので2人で食べさせ合いっこしながら全部食べきった
俺は、夕食の洗い物をしながら美咲に聞いた
「ところで、今日泊まっていくんだよね?」
「え?うん。だって今日はここがパパと私のお家だもん」
「だよね。じゃあお風呂先に入って」
「えー、パパと入りたい」
「!? いや…それは…」
セックスはしたことあるが、一緒に風呂に入ったことはない
裸を見られるのとは違う恥ずかしさもある
「ダメ!一緒に入る!」
「分かった分かった。洗い物終わるまでちょっと待っててな…」
「うん!」
結局簡単に押し切られてしまった
美咲は本当に楽しそうだ。俺をからかうのが楽しいのか?

洗い物を済ませて、風呂の湯を貯めている間、俺の心臓は激しく響いていた
風呂が貯まったかなと思い、無言で立ち上がると、やはり美咲も無言で脱衣所についてきた
俺は美咲に背を向け、平静を装って無言で服を脱いでいた
すると後ろから肩を叩かれ、振り返ると
「ねぇパパ〜脱がして〜」
「は!?」
どこまで役になりきるつもりなんだ…というか子供でも服くらい自分で脱ぐだろう…
「ねーお願いー」
「分かった分かった…」
俺は美咲が来ている服を一枚一枚脱がしていき、上も下も残り1枚の状態になった
改めて聞くまでもなく明らかに美咲は俺が脱がすのを待っている
俺はぎこちなくブラホックを外し、美咲の胸を隠している布を取った
何度か見たことがある小さい胸が露わになる
まじまじと見つめるのもアレなので、パンツも急いで脱がす
美咲は俺が降ろすのに合わせて右足、左足を順に上げた
まだ俺がズボンを履いていたのがせめてもの救いだった

できるだけ時間をかけて自分の服を脱ぎ、風呂に入った
美咲は既に風呂の中で待っていたが、まだお湯を浴びている様子はなかった
「もー遅いよー風邪ひいちゃう」
「ゴメンゴメン、だったら先に体洗っといてくれればいいのに…」
「だってパパに洗ってほしかったんだもん…」
これは予想していた
だが、その予想を上回る裸の美咲にパパと呼ばれる衝撃に股間は素直に反応してしまった
「分かった…じゃあ背中流すから早く前向いて」
「はーい」
そういうと美咲は椅子に座って俺に背を向けた
まじまじと背中を見るのは初めてだがとても綺麗だ
髪もやはり綺麗な黒髪だ
まだシャンプーもしてないのにとてもいい匂いがする
俺は出来るだけ優しく髪や背中を流した
胸や陰部は「美咲は娘だ…美咲は娘だ…」と言い聞かせながら無心で洗った
「ありがと、パパ!じゃあ今度は私が洗うね!」
これも予想していたので、俺は素直に美咲に洗ってもらうことにした
ただし
「洗うのは背中だけでいいからな?前は自分で洗うから。これはパパの命令だ。いいな?」
「う、うん……分かった」
できるだけ怖くそう告げた
美咲は大人しくそれにしたがって、背中だけを念入りに洗ってくれた
それが終わると、美咲は湯船に浸かり俺が自分を洗うのを見ていた
俺は洗い終わって湯船に入ろうとしたところで気付いた
独り暮らしのアパートの風呂だから、決して浴槽は大きくない
だが、2人ギリギリは入れないこともない
美咲はニヤニヤして待っている
あぁ…心臓がいくらあっても足りない
「どうしたのパパ?一緒に入ろうよ」
「あぁ……分かってるよ」
美咲は浴槽の右端に寄り、俺が入るスペースを作ったので俺は左側から入った
俺が座るとお湯はかなり溢れだしてしまった
すると美咲は俺に背を向けて座り、朝、ゲームした時のような態勢になった
向かい合って座るよりは色々と好都合だ
だが、濡れた髪の毛から覗くうなじはそれだけで俺を惑わせた
「そ、そろそろ上がろうか。温まったし」
「そうだね」
体はもう十分に温まったを通り越して熱かった

風呂を上がると何をするでもなく俺達はテレビを見ていた
もちろんあの態勢で
今日だけで1年分の美咲のつむじを見た気がする
時折、テレビを見ながら会話をしたりした
「ねぇーパパ、お腹すいたー。ミルク飲みたいー」
「パパはママじゃないからおっぱいは出ません」
「えーでも男の人でもミルクは出るよー」
「こどもはそんなこと言いません」
「むー」
会話が途切れると、俺は美咲の頭をなでたりした
顔は見えなかったが美咲の表情はその度に緩んでいるようだった
そうやって時間が過ぎて行った

不意に美咲が切り出した
「もう12時だね」
「え?あ、本当だ」
壁にかかった時計を見るともう11時59分が55秒を過ぎており、クリスマスイヴは終わりを告げた
「今日はありがとうね、翔君。私のわがままに付き合わせちゃって」
「ううん。刺激的でとっても楽しかったよ」
本当に楽しかった。多少疲れたが
「ねぇ、なんで私がこんなお願いしたか分かる?」
「え?それは俺に甘えたかったからじゃ…」
「うん。それもあるけど、本当は違う目的があったの」
「え?なに?」
俺は全く分からず、ただ首をかしげた
「翔君を傷つけちゃうかもしれないけど聞いてね」
そう前置きして、美咲は語りだした
「翔君ってさ、ちょっと頼りないかなーって思っちゃうときがあるんだよね
クリスマスの過ごし方も、プレゼントも自分で決められないし
だから試そうと思ったの
翔君に頼りがいがあるかを
私がこどもの役をやって、翔君がパパをやればこどもを守る、頼れるパパの一面を見れるかなーって」
「…で、どうだった?」
「全然ダメだった」
「……」
「朝もゲームしてるとき、私が座って動揺してるのバレバレだし」
「……」
「昼間買い物に行った時も私の欲しい物聞き出すのも下手っぴだし」
「……」
「プレゼント買いに行ってるのバレバレだし」
「……」
「お風呂もずっとぎこちなかったし」
「……」
「もうちょっと堂々としてほしいかな」
「ごめん……」
「でもね、翔君が料理作ってる後姿見たり
手を繋いで歩いたり
翔君に背中を預けて座って、背中で翔君の暖かさを感じて
やっぱり、私は翔君が大好きだなって思った」
「美咲…」
「多少頼りなくても私が翔君を引っ張っていけばいいわけだし、これからもよろしくね。頼りない彼氏さん」
「うん…こちらこそよろしく。俺…頑張るよ」
「はい。頑張ってね。あと、コレ…」
美咲はカバンから包装紙で包まれた箱を渡してきた
「開けてみて」
「うん」
包装紙を丁寧に破って開けると、マフラーが入っていた
「これ……俺が美咲に買ったのと同じ…」
「私がトイレに行くって言ったら翔君がマフラー買いに行くだろうなーと思って、嘘ついて実はあとをつけてたの
それで翔君がマフラーを買った後、私も同じのを買ったの」
「そうだったのか……つくづく情けないなぁ俺って
じゃあ俺からもコレ。クリスマスプレゼント」
俺は隠していたが、その必要もなかったマフラーを美咲に渡した
「ありがと、翔君」
「いえいえ、本当にゴメン」
「もー何度も謝らないでよ。それこそ頼りないよ」
「それもそうだな、ゴメン」
「ほらまた謝ったもー……フフフ」
「…ハハハ」

そうして、俺達は無言でキスをし、そのまま体を重ねて互いの愛を確かめ合った
初めて心までも全て通じ合ったようなセックスをした
多少、俺に足りないものがあってもそれは美咲が埋めてくれる
そう確信して俺達は抱き合ったまま眠りについた

こうして俺の美咲の、初めてのクリスマスイヴは終わった


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