僕は義妹派だが、決して実妹設定を嫌っているわけではない。義妹とは結婚できるというメリットがあるけど、実妹との恋愛には独特の背徳感があるし、それぞれに良さがあると思う。妹に貴賎なし、だ。
      (かじいたかし『僕の妹は漢字が読める3』HJ文庫 P5より)

 上みたいな文章書けたらいいですね。
 多分今回のシリコン大賞とれますよ。
 テーマ「兄妹」と聞いて思いあたったのが、昨年一部で話題になった『僕の妹は漢字が読める』。妹ものSFラノベでありまして、上に引用した文章が随所に散りばめられているという恐ろしいシリーズであります。しかし、ただの妹ものかというとさにあらず。漢字がなくなった未来の日本を描いたSF(俺にとってはホラーといえるかも)としてもなかなか優秀なのです。完成度自体はそう高くなく、作者の技量というものを感じることはできませんが、発想と勢いで押し切ってしまうこの作品、一読の価値有りです。因みに、5巻で完結しました。

 作品数があまりに少ないと聞いて何か書こうと思い立ったはいいものの書くことが見つかりませんね。
 どうしよう。
 今手元に『僕妹』5巻全てあり、ネタ探しにページをめくっているんですが、やっぱり驚懼すべきラノベだと思いを新たにしています。
 まあ余りに引用するのも何なので、一つだけ。

   ———本日は「文学のゆくえ」と題し、おふたりに現代の文学についてたっぷりと語っていただきます。
   ハルカ「文学のゆくえ? 妹者さえあればいい。はい終了」
   オオダイラ「うむ、義実の相克はあれど、妹ものこそ至高というのは同感だね」
      (かじいたかし『僕の妹は漢字が読める2』HJ文庫 P226より)

 さて。兄妹。
 義妹と実妹の相克。
 間違いなく重要なテーマでしょう。
 幸か不幸か、僕には妹がいます。
 お陰で長らく、実妹がサブヒロインの座につくことすら認められるかヴォケ、というスタンスでやって参りました。妹のいる諸兄には納得いただけることかと思います。
 しかし、そんな僕にも去年転機が訪れました。
 『僕妹』ではありません。
 『空の境界』です。あのTYPE-MOONのシナリオライターとして名を馳せる奈須きのこの小説。
 内容は厨二臭いし、信者が気持ち悪いし、文章はおかしいし、論理は破綻してます。だけど、これが無茶苦茶面白い。
 そして、何よりヒロイン二人が可愛い。一人は両儀式という主人公のクラスメイト、もう一人は主人公の「実妹」である黒桐鮮花。
 式が可愛いのはこの際置いておきましょう。ハーゲンダッツとかハーゲンダッツとか。
 この鮮花。一途で悲劇のヒロインなんですよ。空回りしているとも言います。髪の毛長くて(セミロングかな)お嬢様学校に通ってる。もう垂涎モノの設定もついてます。
 兄への思いを早くから自覚していて、このままだとただの妹に終わると危機感をいだき、病弱であるかのように周囲を騙し、都会の空気は合わないので田舎に引っ越す、という理由をでっち上げて有名画家であった叔父の家に養子に出るなんてこともやった挙句に、式に主人公を取られるわけですよ。それでも思いは消える筈もなく奮闘するのが端的に言えば、イヤッホゥです。
 徹底してますね。こういうの大好きです。今まで実妹なんてヒロインとして見られるかバーカなんて言ってた過去もかなぐり捨てたくなります。ここでそんじょそこらのヤンデレのように凶行に走らない理性があるのもポイント高い。
 孤立無援ながらも挫けない姿、実にいじらしくてよいではないか。うん。
 「いじらしさ」って大事な要素ですよね。アスカなんかの魅力を説明するときに便利な言葉です。

 鮮花可愛いよ鮮花とひとしきり言いましたので、最近読んだ妹の話(フィクション)を考えてみます。
 西尾維新の『物語』シリーズ読みましたね。猫物語の途中で放置してますが。『偽物語』が実妹の話だったかと。
 月火ちゃんと火憐ちゃんの二人の妹がいる主人公なんて妹好きにはたまらないお話でしょうね。俺はいまいち惹かれませんでしたけど。鮮花可愛いとは思いますが、妹という属性が問題なわけではないですしね。
 デビュー作の『クビキリサイクル』に始まる戯言シリーズ、正直好きになれません。何が萌えとミステリの融合だ。「と」で繋ぐならミステリ部分もう少しマシなの書けやゴルァと思います。『クビキリサイクル』に出てくる多くの天才は、森博嗣のメフィスト賞受賞作の『すべてがFになる』の真賀田四季博士と比べ物にならないほど迫力が足らないですし。
 そういえば、『さくら荘のペットな彼女』のヒロインも天才でしたっけ。なんかああいうのって「天才? あれだろ。少しずれた感性持ってればそれっぽいだろ。だから非常識にしてみました^^」みたいな思惑が透けて見えるようで(俺の誤読の可能性も大いにありますが)、嫌で嫌で。
 話を戻して西尾維新。戯言シリーズは最初の二作読んでお腹いっぱい。『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』はまんま戯言シリーズのパクリですが、こちらは大好き。『電波女と青春男』以降は知りません。
 まあでも、何の因果か某一人君が「『化物語』以降明らかに作家としての実力がついてる」なんて熱烈に主張するもので(因みにネットで俺がパッと見た感じでは真逆で、『化物語』以降劣化した、と云う意見が大半でした)、ならば読もうと読んでみました。
 これが思ったより悪くない。よーするにとてもラノベっぽいキャラクターどうしが延々と言葉遊びだとかパロディだとか散りばめつつ掛け合いをしていくという他愛ない話なのですが、ハマる人はハマるだろうというラノベ。ストーリーはあるのかないのかという程度ですが、ハーレム要員は正規の彼女を含め、同級生二人、1つ下の後輩一人、中学生の妹二人、更にその友達一人、小学生一人、数百歳のロリババア一人(金髪)と、書きだしてみると驚くばかりの数ですねほんと。こいつらがひたすらあんまり中身の無い会話を、時にはメタネタも織り交ぜつつやっていくのを読んで、何となくRaimが好みそうだと思いました。どうだろう。好きなラノベの話でそう盛り上がった記憶がないからなあ(そもそも戦力差があまりにありすぎるので)。
 ただね、メタネタってあんまりやられると冷めるよね。メタフィクションであることを柱に据えるならまだしも。作者が安易な逃げに走ってるようにも見えるんだよ。
 閑話休題。
 妹二人ってまたブラコンで、主人公である兄もシスコンであるって、サブカルチャー嫌いな人が聞いたら卒倒しそう。この兄貴、妹二人のファーストキスを奪い、上の妹の歯を磨き、下の妹の胸を揉むと凄いことをやってのけるので、妹もの好きな人が読んだら楽しいんじゃないでしょうか(投げ槍)。
 物語シリーズは多少オモシロイと思ったものの、だからといって、コレヤベェお前ら読め読めなんて布教するなんて程でもないし、取り敢えず最近読んで記憶に残ってるからと引っ張りだしてきただけなので。

 そういえば実妹がどうのこうのって話してきたけど、義妹の話してなかったな。
 しかし義妹って実妹以上にネタがない……。
 義妹ものってなんかあるかなあ。『僕の妹は漢字が読める』かあとはエロゲくらいしか思いつかん。
 あれだよな。
 同級生の義妹とかいいんじゃないですかね! 前から思ってたのに、義妹になったから……なんて葛藤してくれると多分もっといい。
 戯言だけど。嘘だけど。嘘だけどのほうが言いやすいや。
 ただ「お兄ちゃん」と呼ばれたいというのは理解できない。何なんですかねあれ。
 同級生の義妹に、お兄ちゃんと呼ばせるなんてナンセンスもいいところ(錯乱)。

 妹ねえ。
 『みーまー』の主人公にも妹いたな。「あにーちゃん」って兄のこと読んでたっけ。で?と言われたらそれまでです。
 大体この原稿一事が万事そんな感じですからどうかご勘弁を。
 去年読んで覚えてる話は、そうですねえ。
 佐藤友哉『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』(妹がレイプされることから始まるお話)
 かじいたかし『僕の妹は漢字が読める』シリーズ(実妹が一人、義妹が二人のお話)
 桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』(寧ろ主人公が妹。この人の『私の男』は父娘で一線超えちゃう話で……)
 ……いかん。思い出せん。何読んだっけ俺。

 ところで、アルゼンチンの作家って知ってます?
 意外にも有名な作家が多いらしいんですよあそこ。
 だいたいラテンアメリカ文学って言うと、コロンビア、メキシコ、アルゼンチン、ペルー、ボリビア、グアテマラ、ベネズエラ、……と名のある作家があちらこちらにいるんですね。なんか不思議。
 天神のジュンク堂ではスペイン文学よりラテンアメリカ文学のほうが多く棚を占拠してます。
 ラテンアメリカというとコロンビアのノーベル文学賞作家、ガルシア=マルケスであり、マルケスというと『百年の孤独』ですよね。全世界で3600万部売れたとか化物です。読書好きなシリコナーの人の中には知ってる人もいると思います。乙一だとか桜庭一樹だとか森見登美彦だとか名前しょっちゅう上げてますよね。確か。とても面白いですので、お金に余裕があればどーぞ。
 んでアルゼンチン。
 アルゼンチンのボルヘスから20世紀のラテンアメリカ文学は始まったようなものなんですが、ここで紹介したいのはフリオ=コルタサル。ボルヘスも20世紀の人なのに、6歳の時に初めて書いた物語は、あの『ドン・キホーテ』に強く影響されたものだったとか、ネタになりそうな話はあるんですけど、作品あまりに難解だし、妹出てこないし、ここで薦められやしません。俺もよーわからんし。
 コルタサル、岩波文庫の『コルタサル短篇集 悪魔の涎・追い求める男 他八篇』を読んだだけです(長編は悉く絶版)。しかし、これがまた素晴らしいんですよ。
 『南部高速道路』なんて南米では珍しいリアルな作品世界にグイグイ引きこまれてしまいますし、一方で現実と幻想の交錯するまたラテンアメリカらしい不思議な表題作二篇も堪りません。
 そして「占拠された屋敷」。ようやくテーマと結びつきます。主人公はある屋敷に住む未婚のいい年した兄妹。二人だけで住んでいるそれなりに広い屋敷が一部、何者かによってある日占拠されます。兄妹はどうにか適当なドアにカギをかけることで占拠されてない空間を確保するんですが、どんどん占拠される面積は増えていき、ついには屋敷から追い出されてしまいます。
 どうです。意味分かんないでしょう。
 でもコレがまた印象的で、俺好み。理解して貰えない気がするけど。
 「パリにいる若い女性に宛てた手紙」もまた秀逸。恋人に宛てた手紙の中で、自分が兎を吐いてしまうからという理由で同居できないと告白するだけの作品。設定も勿論ながら、オチに唸らされた。
 今年読んだ最高の短篇集は間違いなくこの『コルタサル短篇集 悪魔の涎・追い求める男 他八篇』。
 上の俺の紹介読んで、ちょっとでも思うことがあれば買いましょう。これはいいよ。うん。
 カフカはこういう不条理な話を書く作家のパイオニアとしては偉大です。でも、カフカは、例えば安部公房やラテンアメリカの作家といったその影響をもろに受けた人よりも荒削りで読み辛いところがあるんですよね。後続の方が作品は洗練されてシャープで読みやすい。意味がわかんないけど、読んでて楽しいというのは間違いなくフォロワーの方です。勿論カフカの作品も好きですけど。

 脱線しないと話が持ちませんね。
 でも「妹」についての強い思い入れもありませんし。
 世界で一番有名な「兄妹」って誰でしょうね。
 日本だとイザナギ・イザナミ? そういえば卑弥呼も天照大御神も妹じゃなくて姉だよな。
 他の国の神話は知らないや。創造神話には兄妹よく出てくるんだろうけど。
 日本以外の兄妹って言ったら、カーペンターズくらいしか知らん。

 フィクションの兄妹って妹が可愛いのみならず、兄もまた人間できてますよね。
 キョンの兄とか黒桐幹也とか。物語シリーズの阿良々木暦も変態のくせに、妹のために死ねると宣言して、妹のために命がけで奔走したりしますし。
 読んだことないけど『俺妹』もそうっぽいし。
 俺の場合、中学高校と家にいなかったのもあるのかな。

 妹と幼馴染ってライバルになりがちですけど、妹に勝ち目あるんですか。幼馴染って素晴らしいですから。
 ビブリア古書堂で有名になった三上延ってビブリア以前は幼馴染ものに定評があったらしいですね。読んだことどちらも無いですけど。
 姉と幼馴染の対決って構図はなかなかなさそう。姉が少ないから?
 ヤンデレは幼馴染と相性が最高。妹のヤンデレって生理的な嫌悪感すら催しますよ。

 やっぱり兄妹について思うことあんまりないからもう書くこともないわ。
 どう脱線するかも思いつかん。
 ごめんなさい。
 
 オチ?
 浪人生にそんなもん求めんなよ。
 
 では皆さん良いお年を。
 誰かさんが締切を過ぎてれば、明けましておめでとうございます、かな?


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