光のない部屋で 少女は一人
暗闇の中 膝を抱えてる
うっすらと開けた視線の先
冷たい壁は真っ黒に塗り潰されてる

否定しなければ否定されることもない
そうして作った一人だけの部屋
その中心で見たものは

音のない部屋で 少女は一人
目を閉じ 耳を澄ましてる
厚い壁の向こう側
聞こえるはずのない音を探してる

理解しなければ理解される必要もない
そうして迷いこんだ一人だけの部屋
その隅で聴いたのは

ドアのない部屋で 少女は一人
手を伸ばし 出口を探してる
触れた壁の冷たさに
慣れてしまったのはいつのこと

触れなければ触れられることもない
そうして閉じ籠った一人だけの部屋
その端で触れたのは

本当は気づいてる
否定しなくても否定されることもあること
この世界はそんなに簡単じゃないってこと

本当は気づいてる
理解しなくても理解されることもあること
この世界は結構複雑だったりすること

本当は気づいてる
触れなくても触れられることもあること
この世界は意外と優しかったりすること

凝らした目が見たいのは

澄ました耳が探すのは

伸ばした手が触れたいのは

窓のない部屋で 少女は一人
何かの気配に 気がついた
ぴったりと壁に当てた耳が
かろうじて捉えた足音

望まなければ望まれることもない
そうして出られなくなった一人だけの部屋
その中で望むのは

本当は気づいてる
望まなくても望まれることがあること
この世界は存外に面倒だったりすること

大きくなる足音 高鳴る鼓動
ドアは無くても 出口はある
そうじゃなきゃ そもそもこの部屋に入れていない
探すふりをしていたのは 多分出たくないからだ
それでも探して欲しいと望むのは わがままなのかな

突然部屋の角の床が跳ね上がり 少年が一人入ってきた
その手に握られた淡いランプの光は 少女の頬を伝う涙を優しく照らした


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