メロスは勃起した。
必ず、この邪知暴虐のムスコを鎮めねばならぬと決意した。
メロスには自慰がわからぬ。
自分で勃起を鎮めることが出来ぬ。
メロスは村のヤリチンである。
女と遊んで暮して来た。
けれども勃起に対しては、人一倍に敏感であった。
メロスには穴の兄弟があった。セリヌンティウスである。
その友を、これから掘ってこの勃起を収めてみるつもりなのだ。
けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。
興奮気味なメロスも、だんだん不安になって来た。
しばらく歩いて老爺に逢い、語勢を強くして質問した。
老爺は答えなかった。
メロスは両手で老爺のからだを抑え、腰を振った。
老爺は、あたりをはばかる低声で、わずかに喘いだ。
それでもメロスの勃起は鎮まらなかった。
コトを済ませてから、メロスは老爺にもう一度質問すると、彼はこう答えた。
「王様は、人を犯します。」
「たくさんの人を犯したのか。」
「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣を。それから、妹さまを。それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。」
「おどろいた。国王は淫乱か。」
「いいえ、淫乱ではございませぬ。勃起を鎮める事が出来ぬ、というのです。御命令を拒めば十字架にかけられて、犯されます。きょうは、六人犯されました。」
メロスは、単純な男であった。
夜の道具を背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。
たちまち彼は警吏に捕縛された。
調べられて、メロスの股間は勃起していたので、騒ぎが大きくなってしまった。
メロスは、王の前に引き出された。
「この短刀(素チン)で何をするつもりであったか。言え！」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以て問いつめた。
「お前を欲求不満から救うのだ。お前は掘られる気持ち良さを知らないだろう。」とメロスは悪びれずに答えた。
「だまれ、下賤の者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。
「口では、どんな清らかな事でも言える。だが本当にわしを下の口で慰めてくれる者はおらんのだ。死ね。」
「ああ、王は淫乱だ。好き勝手掘っているがよい。私はちゃんと掘る覚悟でいるのに。ただ、——」と言いかけて、メロスは足もとに視線を落し瞬時ためらい、
「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の妹を犯したいのです。三日のうちに、私は村で妹を犯し、必ず、ここへ帰って来ます。」
「ばかな。」と暴君は、嗄れた声で低く笑った。
「とんでもない嘘を言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか。」
「そうです。帰って来るのです。」メロスは必死で言い張った。
「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという無二の友人がいます。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を犯して下さい。たのむ、そうして下さい。」
それを聞いて王は、残虐な気持で、そっとほくそ笑んだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙された振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に存分に犯してやるのも気味がいい。
「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと掘るぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」
「なに、何をおっしゃる。」
「はは。ムスコが大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」
メロスは口惜しく、地団駄踏んだ。


穴の兄弟、セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。
淫君セリヌンティウスの面前で穴の兄弟と穴の兄弟は、二年ぶりに相逢うた。
メロスは、一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言で肯き、メロスをひしと抱きしめ、掘った。
兄弟と兄弟の間は、それでよかった。セリヌンティウスは、縄打たれた。
セリヌンティウスは少し興奮した。
メロスは、すぐ出発した。
勃起したままである。
メロスは一睡もせず十里の道を、妹を犯す妄想をしながら急ぎに急いで、村へ到着したのは、あくる日の午前、陽は既に高く昇って、村人はコトに及んでいた。
メロスの十六の淫乱な妹も、今日は兄の代わりに羊の性欲処理をしていた。
よろめいて歩いてくる兄の、疲労困憊ながらもギンギンなムスコを見つけて驚いた。
そうして、うるさく兄に質問を浴びせた。
「何でも無い。」メロスは無理に笑おうと努めた。
「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。明日、お前の結婚式を挙げる。早い方がよかろう。その前に…俺がお前の処女を奪う。」
妹は頬をあからめた。
メロスは勃起した。
メロスは処女の妹を調教し終え、神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、呼吸もせぬくらい深い眠りに落ちてしまった。
その間に調教された妹がメロスの一物に手を伸ばし、それを彼女の膣へと自ら導き、腰を振った。
「んっ…お兄ちゃんのおちんちん固くて気持ちいいのぉ〜〜〜」
メロスは興奮で目が覚めた。メロスは起きてすぐ、その場に花婿がいることに気が付いた。
メロスはさっさと家を飛び出した。
今から出発すれば余裕で間に合う。


私は、今宵、掘られる。
掘られる為に走るのだ。走らなければならぬ。
そうして私は掘られる。
若いメロスは、つらかった。
幾度か、萎えそうになった。えい、えいと大声を挙げて自身の菊門を刺激しながら走った。
ここまで来れば、大丈夫、もはや故郷への未練はない。
妹には悪いことをしたが、私には今なんの気がかりもない、まっすぐ王城に行けば、それでよいのだ。
急ぐ必要もない。性欲処理をしよう、と持ち前の呑気さを取り返し、その場にいた適当な老爺を犯した。
そして、イった。
しかし、妹と繋がっていたせいで中途半端に射精しかけていたメロスのムスコは暴走し、射精が止まらなくなった。
射精は濁流滔々と集り、猛勢一挙に橋を破壊し、とうとうと響きをあげる激流が、木端微塵に橋桁を跳ね飛ばしていた。
彼は、茫然と勃ちすくんだ。
流れはいよいよふくれ上がり、海のようになっている。メロスは射精しながらゼウスに手を挙げて哀願した。
「ああ、鎮めたまえ、荒れ狂う流れを！時は刻刻に過ぎていきます。太陽も既に真昼時です。あれが沈んでしまわぬ内に、王城に行くことが出来なかったら、あの兄弟が、私のために掘られるのです。」.
すると、それまで轟々と音を立てていた濁流ははたと止まり、後には精液の海だけが残された。
「なんだったんだ…。」
メロスは海を掻き分け掻き分け、見事樹木の幹にすがりつくことが出来たのである。
メロスは大きな胴震いをして、すぐにまた先を急いだ。
陽は既に西に傾き始めている。ほっとした時、突然、目の前に一隊の山賊が躍り出た。
「待て。」
「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。掘るぞ。」
「いや、掘らせぬ。持ち物全部置いてケツを出せ。」
「私にはケツの他にはイチモツしかない。その、ケツもこれから王にくれてやるのだ」
「その、ケツが欲しいのだ」
「さては、王の命令で、こ↑こ↓で待ち伏せしていたのだな。」
山賊たちは、ものも言わず一斉に棍棒()を振り上げた。
メロスはひょいと、体を折り曲げ、飛鳥のごとく身近の一人に襲い掛かり、その棍棒()をへし折って
「気の毒だが正義のためだ！」と猛然一発、たちまち、三人を犯し尽くし、残るもののドン引きする隙にさっさと走って峠を下った。
だが、さすがに疲労し、折からの午後の灼熱の太陽がまともに、かっと照ってきて、メロスは幾度となく眩暈を感じ、これではならぬと気を取り直しては、よろよろ二、三歩歩いて、ついに、がくりと膝を折った。
もはや芋虫ほどにも前進かなわぬ。身体疲労すれば、精神も共にやられる。
もう、どうでもいい、セリヌンティウスは王に掘られても悦ぶだろうという、勇者に不似合いな根性が、心の隅に巣食った。
私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、微塵もなかった。
けれども私は、この大事な時に、精も根も尽き果てたのだ。いや、精力はあるが。
私は友を欺いた。セリヌンティウスよ、許してくれ。
今だって、君は私を無心に待っているだろう。
ああ、待っているだろう。
私は走ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ。
私は老爺とセックスこそしたが急ぎに急いでここまで来たのだ。
いいのだ、私は負けたのだ。笑ってくれ。
王は私に少し遅れて来いと耳打ちした。
遅れたら、身代わりを掘って、私を助けてくれると約束した。
私は王の卑劣を憎んだ。
けれども、私は王の言うままになっている。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。
四股を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。


ふと耳に、水の流れる音が聞こえた。
そっと頭をあげ、音のする方を見ると、メロスの一物からはチョロチョロと尿道に残っていた精液が流れ出していたのである。
メロスは精液を両手で掬って、一口飲んだ。
ほうと長いため息が出て、夢から覚めたような気がした。
歩ける。行こう。
わずかな希望が生まれた。
わが身を投じて、名誉を守る希望である。
日没までには、まだ間がある。
私を、待っている人があるのだ。
私は信頼に報いなければならぬ。
今はただその一事だ。走れ！そして掘れ！メロス！


道行く人を押しのけ、跳ね飛ばし、メロスは走った。
一団の旅人とすれ違った瞬間、不吉な会話を耳に挟んだ。
「今頃は、あの男も、尻にワセリンを塗られているよ。」ああ、その男、その男の尻のために私は、今こんなに走っているのだ。
急げ、メロス。遅れてはならぬ。
「ああ、メロス様。」呻くような声が風と共に聞こえた。
「誰だ。」メロスは走りながら尋ねた。
「フィロストラトスでございます。貴方の穴兄弟セリヌンティウス様の肉便器でございます。」その若い石工も、メロスの尻を触りながら叫んだ。
「もう駄目でございます。無駄でございます。走るのはやめて下さい。もう、あの方を助けることは出来ません。」
「んっ…いや、まだ陽は沈まぬ…あっ///」
「ちょうど今、あの方が死刑になるところですああ、あなたは遅かった。ほんの少しでも早かったなら！」
「いやぁ?…陽はまだ沈まぬ。」メロスはフィロストラトスの尻の愛撫に感じながらも、赤く大きい夕日ばかり見つめていた。走るより他はない。
「やめて下さい。あの方は、あなたを信じておりました。刑場に引き出されても、平気でいました。王様が、さんざんあの方の股間をいじっても、メロスは来ます、とだけ答え、強い信念を持ち続けている様子でございました。」
「だから…んっ…走るのだ。間に合うぅん?…間に合わないぃ…いい///…は問題ではない。はぁん?もっと恐ろしくて…んっ…大きいものの為に走っているん…穴はらめええええええええ///」
「ああ、あなたは気が狂ったか。それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら間に合わぬものでもない。走るがいい。」
まだ陽は沈まぬ。最後の死力を尽くして、メロスは走った。
陽はゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、メロスは疾風の如く刑場に突入した。
間に合った。


「待て。その人を掘ってはならぬ。メロスが帰って来た。約束のとおり、いま、帰って来た。」と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。すでにセリヌンティウスは服を脱がされている。メロスはそれを目撃してちょっと興奮しつつも群衆を掻きわけ、掻きわけ、
「私だ、刑吏！王を掘るのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる！」と、かすれた声で精一ぱいに叫んだ。群衆は、どよめいた。あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。セリヌンティウスは、服を着せられたのである。
「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。「私を掘れ。精力の限りケツを掘れ。私は、途中で一度、お前が王に掘られるのを見るのも悪くはないと思った。君がもし私を掘ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。掘れ。」
セリヌンティウスは、すべてを察した様子でうなずき、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスのケツを掘った。そして優しく微笑み、
「メロス、私を掘れ。同じくらい音高く私のケツを掘れ。私はこの三日の間、たった一度だけ、王に掘られるのもそれはそれでいいと思った。生まれて、はじめて君を疑った。君が私を掘ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」
メロスは腰を思いっきり振りかぶってセリヌンティウスのケツを掘った。
「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。
「おまえらの望みは叶ったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」
「万歳、王様万歳。」
ひとりの少女が、緋のマントをメロスに捧げた。メロスは、まごついた。佳き友は、気をきかせて教えてやった。
「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」
勇者は、皆に見られていることに気付き、ひどく興奮した。
そして、その後、メロスとセリヌンティウスと王様は3人で王の寝室へと消えて行き、メロスも王も勃起を鎮めることが出来たのでした。


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