「…よしっ、終わった」
朝一の会議に提出する書類を作り終えて、とうに常温になったコーヒーを飲み干す。
部長の「これ明日までにまとめておいて」の一言のせいで久々に徹夜をしてしまった。
外は白んでいるところか太陽が照り付けており、部屋の外は車が行き交っている。
時刻は朝の5時50分、タイムリミット3時間前での完成だ。
「さて…あと3時間どうしたものか」
出社までの時間、選択肢は仮眠をとるか起きておくかの二択だ。
その答えは決まっていた、起きておくしかない。
どうにも仮眠というものが苦手で、これまで何度も数時間寝ようとして7時間ばっちり寝るという失敗を繰り返してきた。
そのことで大学を一年留年したのも今では良い思い出だ。
つまり、私はどうやってこの眠気の中起きておくかということを考えていた。
刹那、私は自分の身体の一部分が熱く、硬くなっていることに気が付いた。
そういえば「疲れマラ」という言葉を聞いたことがある。
極限まで疲れていると、身体が最後の力を振り絞って子孫を残そうとするために勃起する現象だ。
まさに自分は今その状態にあるのかもしれない。
とはいえ、ここで自慰行為を済ませてしまうとスッキリして眠くなってしまう。
もっと目が冴えるような刺激的な……。
そうだ、呼ぼう。
デリヘルを呼ぼう。
最近のデリヘルは24時間営業しているところもあり、呼べばすぐ来てくれるだろう。
そう決めてからの行動は早かった。
以前使ったことがあるデリヘル店に「巨乳」「すぐ来てくれる子」という要望だけ伝え、部屋のベッドを軽く掃除して待つことにした。
30分後、インターホンが鳴る頃には興奮で私の目はさえわたっていた。
女の子を部屋の中へ迎え入れながら、その容姿を確認した。
ウエストは細いとはお世辞にも言えないが、かと言って太りすぎてはおらず、胸とのくびれは明確に存在する。
顔も決して悪くはない、目鼻立ちがはっきりしていて表情もとても柔らかい。
「おはようございます、ゆりです。ご指名ありがとうございます。」
「あぁいえこちらこそ……」
デリヘル嬢に似合わず貞淑な雰囲気をまとう彼女に私は見とれてしまっていた。
数秒の間見とれていると、彼女は顔を近づけて唇を重ねてきた。
彼女の甘い匂いが鼻孔をくすぐる。
派手過ぎず、男に安心感を与える優しい匂いだ。
そして、唇を触れ合わせながら器用に私の服を脱がせてきた。
私は彼女の為すがままであった。
今日は疲れている、これくらい為すがままで進むのもむしろ良いかもしれない。
さっと二人でシャワーを浴び、布団の中に入った。
「お兄さん、お疲れですか?」
「あぁ…えぇ実は徹夜明けで少し…」
「やっぱり…何だかそう見えたので。今日は私でゆっくり癒されて下さいね、ほら」
そう言いながら彼女は身体に巻いていたタオルを取り、私の顔に胸を押し付け抱きしめてきた。
先ほどより、更にしっかりと彼女の甘い匂いと温かさ、そして柔らかさに包まれる。
劣情よりも、安心感やそういったものを感じる。
なんて素敵な女性なんだ。
そっと目を閉じ、私は彼女に身体を預けた。
次に目を開いた時、私はまだ彼女に抱き着いていた。
しかし、身体の重さや眠気、そういったものが抜け落ちていることを瞬間的に察した。
柔らかい双丘から顔を外し、時計に目をやると正午過ぎを指していた。
「えっと…あの、もしかして私はずっと……」
「はい、お疲れのようだったので起こすのも忍びなくて」
さっとベッドから離れ、携帯電話を開くと案の定不在着信が大量に届いていた。
しまった、完全にゆりさんの母性にやられてしまった。
股間は起床後の朝勃ちをしているが、そんな余裕はない。
「すいません、もう出掛けなきゃいけなくてっ。来てもらったのにすいません!」
「あ、そうだったんですね。起こさなくてごめんなさい。それじゃあ…」
彼女は携帯電話を操作し、画面を私に見せた。
「延長料金含めて7万4千円です」
「…………あぁ、そうですね」
延長料金が本当に計算通りかを頭で計算して、その言葉を絞り出した。
とにかく早く会社に行かねばならず、タンス貯金を引っ張り出して支払った。
そしてそのまま彼女と一緒に家を出た。
家を出ると一瞬顔をしかめる程真上から太陽が照り付けていた。
そんな私の横顔に彼女はちゅっとキスをしてきた。
「今日はこうなっちゃいましたけど、また指名してくださいね」
「もちろんですよ」
今日は7万円払って睡眠時間を確保したが、次は60分2万円でパイズリしてもらおう、そう誓いながら私は駅に向かって走り出した。
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