6位 耀 / らいむ 5点
・凄まじい文章量。それに加えてテーマに正面から立ち向かっててすごい。主人公の内面描写がしっかりしてて流石です。
・仮面と化粧の話。自分もちょっと検討したけど書けなかった。
・この恐ろしくきれいな円環構造、俺でなきゃ見逃しちゃうね。実質源氏物語でしょこれ
・描写はとても丁寧だけど、大事な部分が良くも悪くもあっさりな印象だった。あと、五等分の花嫁の二乃がどうしても思い浮かんでしまった。
・思ったより淡々と進む。なんか春樹的な…?
・最初はいまいち話に入っていけなかったんだけど、海辺のシーンで一乃が自分自身に目を向け始めてからは引き込まれた。前半で望美の存在をもっと印象づけてくれればよかったかな。
[あとがき]
あとがきです。らいむです。
結構書いていたのが消えたので簡潔にします。
初っ端から長いのですみません。読んでいただきありがとうございます。
「化粧は誰がために」というタイトルでした。変えてよかった。もう少し考えたかったですが耀も気に入ってはいます。
四人の名前は「主よ、人の望みよ喜びよ」からつけています。どうでもいい。
最初と最後以外は「心と口と行いと生活」での各部各曲から着想を得ました。どうでもいい。
構成とセリフで各シーンを先に作って間を埋めていくという変な書き方をしたら超スランプになりました。改めて己の筆力・表現力の未熟さを思い知る羽目になりました。
私に昔、仮面のつけ方を教えてくれた師匠のような友人のことを思い浮かべながら書いていました。もっと書きたい見せたいことがあるのにと思いながらそれを言語化できず苦しみました。ただ、これを書いていたおかげで仮面の下で苦しんでいた彼に恩返しができたということがあったのでそれだけは良かったです。
色々戻ってしまった感があり更に締め切りを延ばしに延ばしてしまってしまったので反省しています。
次回はちょこっとチャレンジはしつつコンパクトにまとめて早めに書き終えるようにしたいと思います(いつもの)


5位 Makeup! / Lambda 9点
・いいですねぇ~、この不気味さ。少し回りくどい、古風な文体がじわっとした雰囲気を醸し出してホラーとしての厚みを増している。冒頭の『わたしは化粧に取り憑かれていたことがある。』という過去形で書かれた文が、読み終わってから見返すと全く違う意味合いに見えてぞっとするという構成も素晴らしい。ただ一点ケチを付けるとすればタイトルが内容と全く合っていないことか。
・良くまとまってる。割と似たような事書こうとしたけどまとまらなかった。
・不条理文学感がすっごい。最近見た哲学の講演映像に鏡に関する話があったけど(鏡に映るものを見る時一体何を認識しているのか的な話)それ通ずるものがある。
・銅鏡のくだりが好きです。現代において化粧は鏡とは切っても切れない関係。化粧というテーマを掘り下げていくうちに必ずぶち当たるであろう問に真正面から飾らず答えている作品に思いました。
・よくわかんなさもあるけどなんか読ます不思議な文章。
・かいぎょうがすくない
[あとがき]
クルアーンの駱駝章にも作品を書き上げたら年内にあとがきを書くべしと書かれているのでオオツゴモリ・イブにこれを書いています。
今回の作品はいかがでしたか? 改行が一人だけ改行が少なくてPC画面でウィンドウ最大化していたら読みづらかったんじゃないでしょうか。はっはっは。
さて、今回の作品を書き始めた当初はフリオ・コルタサルの『山椒魚』のパロディを意図していました。これも山椒魚に取り憑かれた男が何度も山椒魚(たち)と見つめ合ううちに入れ替わってしまうという短篇です。最初は割と文も忠実に模していたんですが、途中から思ったより長くなりそうなのもあり面倒くさくなって行きつ戻りつ削って適当に埋めて帳尻を合わせたので、大まかな構成を除いてはあんまり原型を留めていないんじゃないかと思います。多分。『山椒魚』は岩波文庫の『遊戯の終わり』に収録されていますのでぜひどうぞ(浪人中にもコルタサルはいいぞという話を書いていそう)。コルタサルは幻想的な小説の名手で、『山椒魚』以外にも2つの世界(人間の世界と山椒魚の世界、現実の世界と夢の世界、など)を行き来するうちに入れ替わる、というモチーフの作品をいくつも書いていてなかなか面白いです。ちなみにこの山椒魚ってウーパールーパーなんですよね。初読時は「ピンク色の頭がアステカ人を思わせる」みたいな描写を読んでナンノコッチャと思ってたんですが、大学の講義でこれがウーパールーパーということを知りました。ウーパールーパーって山椒魚の一種なんですって。ちなみにその講義でアーモンドを漢字で書くと巴旦杏になるというのも知りました。
化粧の一層一層は微小な変化に過ぎないのに気がつくと全然違うものになってしまっているっていう描写をし忘れたのが心残りです。ちょうどこれの執筆開始前まで書いていたコンパイラも、個々の変換は自明な大したことないものなのにそれを重ねていくと最終的な出力は入力からどうやって変換したのかわからないものになるという面白さがあります。執筆中もそのことを入れられたらいいかなと思ってましたが結局入れ忘れましたね…。まあこういう話自体は多分どこにでもあって珍しい話ではない気もしますが(そういえば福岡伸一も『世界は分けてもわからない』で似たようなことを書いていたかな)。
それでは。



4位 Belladonna / Mr.SPERMA 10点(ACE1)
・ベラドンナってなんだろうと思ってググりました。美しい女性という意味で毒草?と思ったら化粧に使われていたのですね。日本で似たものと言えば白粉でしょうか。途中までのシワについてはそのままだと思うのですが最後の深いシワが意味するところがどうしても分からなかったです。飾らない感情が素直に現れているのかとてつもない真剣さを表現しているのか、泣き顔や笑顔を意味しているのか。化粧というテーマでまず想起される男女や恋愛という題材で化粧の外側と内側を見事に書ききっていて、死者もなく順当にハッピーエンドを迎えていて今回のトリがこの作品でよかったと思いました。
・なんか洒落てて好きよ。
・童話を思わせる三人称敬体の語り口と語られるどぎつい内容のギャップが面白い。
・化粧って綺麗にするという意味でしか取ってなかったけど、隠すという意味でも使えるんだよなと気づかされた。
・ですます口調が雰囲気を作っていた。
・「For Whom」と似たテーマではありながら、こちらの方がリアリティがあってそれも良し。ただ、荒木に出会った尾神の変化が地の文の説明以外にもあると更に読みごたえがあったかも。
[あとがき]
ヒロインの下の名前が最後まで出てこない、ワイルドだろ?

俺の中で化粧と言ったらまぁーービッチ以外の選択肢はないわけです。
最近『尽くすビッチ』っていいよなぁ~~!!って思ってたんでそれ中心に書きました。
純粋な恋愛ものを書いたのは多分初めてですが最後の方はめちゃくちゃ恥ずかしかったな。エロっぽいパートは全然平気なんすけど。

今回はみんな難産だったようですが、まあ例にもれず俺も苦戦しましたね。
お題が難しかったのもそうですが、『自分が納得してないものを書いちゃいけないな』っていうのを前回で痛感したので、自分へのハードルが上がったのもあります。
ああでもないこうでもないと何度も書き直すうちに時間がなくなってしまいました。
そのせいもあって、描写が必要最低限になってしまって主人公への感情移入度が下がってしまいましたね。承と転が圧倒的に足りなかった。
とはいえその中で自分に適したアプローチの仕方が見えてはきました。次回にガッツリ活かしたいところです。

余談ですけど、最近は会話文より地の文の方が書いてて楽しくて、そっちに比重が傾いてます。異種もののエロゲーのテキストらしきもんを書きまくってるせいだと思いますが。


3位 懺悔 / EAT 11点(ACE3)
・化粧というテーマで死に化粧を題材に勝負しなくてよかったと思いました。ここまでリアルにかつ鋭く死に化粧を書いた作品が出るとは、流石の一言に尽きます。
・正直、最後の感情がうわっと漏れ出す演出は俺にはハマらなかった。主人公と『君』に思い入れを持つヒマがなくて、他人事のように見えちゃったな。冒頭のやり取りは好きなんだけど。
・前半の話に引き込まれたが、後半は作者が露骨に出ていて笑った。ところで、題材が被ったうえに私の直前の順番に来るとはどういうつもりですか?
・もっとうまく書けたって気しかしないがまぁ出すことが大事だから…
・短い作品なのにとても心を揺さぶられた。緩急のつけ方がとにかく素晴らしい。いつかこういう作品を書いてみたいですね。
・すまん! よくわからんかった!
・静から動への落差が見事
[あとがき]
どうもご無沙汰してます雪男です。
今回は化粧、というお題で書いたんですが、割と難産な仕上がりとなりました。
あんまり自作の事を解説するのは手前味噌になるので何とも加減が難しいですね。
化粧の事を書くのは難しいし調べるのも手間なので死に化粧と嘘についてで書き始めました。
で、実体験を嘘と織り交ぜて書いてたのはいいんですが、オチがあんまりインパクトが無かったので、もう一つ懺悔の要素を追加した訳です。
懺悔を他人にする事の残酷さを意識しているにも関わらず『君』に懺悔している事とかもう少し強調したかったんですが技量が足りなかったかなと。後は傷を縫う辺りとか段々描写する事に飽きてきてサボってるのが読み直すと気になりますね。
思い返すにも難産だったので読み直すのも結構苦痛な一本になりました。次はもう少し上手く書きたいですね。


2位 すっぴんの思い / 淫卵 13点(ACE1)
・『虚飾を剥がす』っていうテーマ自体は『化粧』って言われた時点で連想した人も多いと思う。が、こう鮮やかに描かれちゃお手上げですわ。偏屈ばあさんの生き生きとした、ふてぶてしい描写がいい。殺しても死にそうにないくせに自分を『元気じゃない』認定してるのもそれっぽい。そして何より、主人公の語り口に嘘っぽさがなく、すっと心に入ってくる。(今回は芝居がかった言葉回しの作品が多かったのでより際立っていた)『すっぴん』の名を冠するにふさわしい作品だったと思う。
・途中まで一番読みやすかった。オチ周り、もうちょい読みたかった!
・「中3のお年玉が1000円」やらオチやらユーモアにあふれていて良い
・読み終わってからタイトルに唸らされた作品でした。常にすっぴんでいてくれる存在は貴重でありがたいものなんだなと思う今日この頃です。祖母のすっぴんは刺々しいものでしたがだからこそ確かに彼女の化粧の内側に届いていたのでしょう。
・ネタがかぶりました!
・薄っぺらい化粧や仮面ではその人の本質を完璧に覆い隠すことはできないし、時にはその本質こそが一番美しい……のかな。
[あとがき]
時間がなくて描写があっさりになってしまいましたという反省です。
あと、Lambdaに「淫卵が軽妙なものを書いてきそうだ」と言われたことが枷になっていました。
恐らく3月から少し余裕ができるので次回は頑張ります。

ところで、ちんちんにカスが溜まってちんちんに雪化粧という非常に汚いネタがあるのでインスピレーションが湧いた方はどうぞ続きを書いてやってください。
原作料は要りません。


1位 For Whom / xnu!7 14点(ACE3)
・ほほえましい話。娘が大人になった時の話も書いてください。
・化粧は何のため誰のためにするのかということを一番ストレートに美しく描いている作品だと思いました。それにしても子煩悩なパパがとてもかわいい。そのうち自分が化粧をマスターして娘に教え始めるのではないかというほど。優しく美しく愛のある世界で心がほっこりしました。
・なんかツボってしまった。
・幼い娘に化粧させるのはうまいなあと思った
・今回たくさん死人出たけど、死人の使い方が一番良かったのがこれかな。死んでる人が生きてる人を衝き動かすってのはすげえ好きな演出ですね。褒められたり認められるのは『誰に』というのが重要だよな、というのは常々思いますね。
・すっきりまとまってる。演出きいてるな?。
[あとがき]
 めちゃくちゃ寒くなりましたね。こんばんはxnu!7です。読んでくれてありがとう。
 化粧……本当に難しいテーマでした。度重なる〆切の延期にも関わらず全然書きたいものが浮かんでこなくて、ギリギリまで頭の中は白紙状態でしたね。
 もう駄目かもしれんと思ったその時2週間前の会話が蘇りました。あまりに思いつかなすぎて雑談がてら後輩に「化粧で小説書かないといけないんだけど何かアイデアない?」と聞いたところ、「パッと思いつくのは子供が人形相手にメイクしたりとか。あとは見て欲しい人のためにメイクしたけど気付かれなくて悲しい、とかっすかね~」とのご意見。当時はいまいちピンとこなかったのですが、試しに組み合わせて書いてみると割とあっさり書けてしまった。マジでありがとう後輩。
 毒にも薬にもならん話になってしまったと思いつつ、直前までノーアイデアだったにしてはコンパクトでオチのある作品が書けたと思うので個人的には満足です。昔は「書きたいことはなるべく詰め込む」方向で書いていたのですが、今回は「書かなくていいことはなるべく削る」方向で推敲できたのでそこも満足ポイント。
 次のテーマは「秘密」ですね。今度はもう少し感情をむき出しにする作品を作れたならと思います。それでは次回もよろしくお願いします。



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